俳優の役所広司(70)に「先生」と呼ばれているお笑い芸人がいる。役所主演で22日にネットフリックスで配信され、話題作となっているドラマ「俺のこと、なんか言ってた?」でサウナ関連の監修を務めた箸休めサトシ(45)だ。
サウナの熱波師としても活動し、2023年には蒸気をタオルであおいで客へ送る「アウフグース」を競う世界大会に団体で出場。日本大会で4位も、17カ国間のプレーオフで優勝し、世界大会への切符を獲得した。本選でも38チーム中14位になった腕前で、役所ら、キャストに直接指導を行った。本紙の取材に応じ「役所さんから先生呼びされることなんて普通はないですよね」と顔をほころばせた。
同作は主人公がサウナ店に住み込みで働くことなどから、劇中でサウナのシーンがしばしば描かれる。監修はマットの敷き方から砂時計やストーブの配置、浴室のカランの直し方、すれ違う客へのスタッフのあいさつなど、多岐にわたった。アウフグースは、ただ熱波を送るだけではなく、タオルを華麗に回すことなども重要視されるが、役所はあっという間に習得。「タオルさばきが笑っちゃうぐらい僕とそっくりで、ちょっとびっくりしました」と圧倒された。
サトシは21年結成のコンビ「四兆」として活動中。日常を切り取ったシチュエーションなどをテーマにしたシュールなコントが持ち味だ。だが、活動のペースが「芸人として週1日、熱波師として週5日」で、ネタ作りも「割合が1対9」と相方の陣野(35)に任せきりだった。
ドラマ監修はその姿勢を改める機会となった。役所ら、トップ俳優の演技力に「同じ場面を繰り返して撮影しても、いつも最高水準のパフォーマンスなんです」と舌を巻いた。コントを“演じる”上で大きな刺激となった。また、制作側がサウナ室内の細かい作りやせりふのちょっとした言い回しまで突き詰めるさまに「自分たちのコント作りがどれだけ雑だったか…もっと丁寧にネタに向き合わないとダメだ」と痛感した。
今では「もっと一言一言の重みを大事にする意識が強まっています」と積極的にネタ作りに携わり「割合も4対6くらいになってきています」と変化を明かした。熱波師としての収入が芸人の活動資金になっているが、「お笑い活動の比率がもっと増えるように」と意識改革中だ。
サウナ業界のカリスマという武器があるだけに、バラエティー番組などをきっかけに売れっ子になる道筋も一見ありそうだが、簡単にはいかないようだ。「やはりお笑いの影響力が大きい。結果を残さないと」と言葉に力がこもる。
目標はこれまで準々決勝進出が最高成績の「キングオブコント」での優勝だ。45歳と決して若くないが、所属事務所「ソニー・ミュージックアーティスツ(SMA)」の錦鯉やハリウッドザコシショウも賞レース王者となったのは40歳を過ぎてからだ。「先輩たちの活躍が励みになります」と前を向く。「お笑いで売れて、そこからサウナのこともしゃべれるようになったら理想です」と思い描く。
アウフグースで華麗に熱波を送るように、お笑い界にも熱い旋風を巻き起こしていく。(山内 健司)
▽「俺のこと、なんか言ってた?」 世界中から忘れられた大物俳優がエキストラから再び成り上がろうと奮闘するオリジナルコメディー。TBSドラマ「不適切にもほどがある!」の脚本・宮藤官九郎氏とプロデューサー・磯山晶氏による再タッグ作。役所のほかに、賀来賢人(37)、松山ケンイチ(41)、河合優実(25)らが出演。ダウンタウンの浜田雅功(63)が俳優名義「濱田雅功」として16年ぶりにドラマ出演していることでも大きな注目を集めている。
◇箸休めサトシ 本名加藤聡(かとう・さとし)1981年(昭56)6月21日生まれ、神奈川県出身の45歳。10年に一般企業を退職し、芸人活動の傍らサウナ施設でアルバイトを開始。19年頃にサウナブームの波が来て、熱波師としての地位を確立した。イベントなどで全国各地から声がかかるほどのレジェンド。コンビではツッコミ担当。1メートル80、血液型B。
2026年10月31日 08時35分