将棋の女流棋戦最高位「白玲」を通算5期獲得し、女性で初めて棋士資格を得た西山朋佳新四段(31)が26日、東京都渋谷区の将棋会館で会見を行い、棋士資格の権利を行使することを発表した。来年4月1日付の四段昇段で、史上初の女性の棋士が誕生する。来年4月以降は棋士と女流棋士を兼業する意向で、将棋界に新たな風が吹いた。
前例なき道を切り開く覚悟を、晴れ晴れとした表情で語った。「たくさんの方に背中を押していただき“もっと強い方と戦いたい”と思った」。上下黒のスーツ姿で出席した西山は、真っすぐに前を見つめた。
10日の白玲戦で勝利し、日本将棋連盟が昨年新設した規定をクリア。適用第1号として、フリークラス四段への編入権を得た。行使を決めたのは約1週間後。23日に申請したが、同日は竜王戦第2局が指されていたため発表を見送り、申請締め切り日の26日に表明した。
棋士になるには養成機関「奨励会」突破か、編入試験合格が必要だ。女性でプロ手前の奨励会三段リーグに在籍したのは西山ほか、福間香奈女流4冠(34)、中七海女流三段(28)の3人でいずれも退会。編入試験は西山、福間が受験したが不合格だった。そんな中、新規定でチャンスをつかんだ。「三段時代の私にこういった日が来ると言うと驚くと思うけど、機会を頂いたからには誠心誠意頑張りたい」と語った。
棋士と女流棋士の兼業。決断にあたって不安の種だったのは過密日程だ。棋士の対局や8つの女流タイトル戦などと並行すると、単純計算で年間70局超。年間対局数トップの数字に匹敵する。これを連盟がサポートする方針を示したことで覚悟が決まった。「対局数について今後制度を検討していただけるとうかがっている。行使するにあたって、前向きに考える要素になった」と明かす。公式戦の8大タイトル戦以外の棋戦出場を考慮するなど、さまざまな制度作りが考えられそうだ。
一方、厳しい道のりも待ち受ける。フリークラスは、10年以内に名人戦出場権を争う順位戦C級2組に昇級しなければ棋士を引退となる。それでも「目の前の一局一局を全力で指す。積み重ねの先で結果につながれば」と意気込んだ。
「決断は責任を伴うもの。今後、到達点を塗り替える役割を担う一人と認識しています」。指し手の力強さから「剛腕」の異名を持つ西山が男女同じ舞台で腕を振るう。 (小田切 葉月)
◇西山 朋佳(にしやま・ともか)1995年(平7)6月27日生まれ、大阪府出身の31歳。10年、伊藤博文七段門下で奨励会入会。15年に三段まで昇段したが、21年に退会し女流棋士に転向。25年11月に一般男性と結婚。
2026年10月27日 07時23分