【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】ソフトバンクとDeNAの対戦となった「SMBC日本シリーズ2026」が横浜スタジアムで幕を開けた10月24日、すぐそばの関内ホール(大ホール)で「柳家喬太郎・蝶花楼桃花・三遊亭わん丈 三人会」が開かれ、日本シリーズにも負けない熱い高座が繰り広げられた。
開口一番を務めたのは人気の二つ目、鈴々舎美馬(みーま、33)だ。華のある人妻落語家で、出てきただけで会場がパッーと明るくなった。独自色を出した「金明竹」で会場を沸かせた。
続いて登場した三遊亭わん丈(43)は「近江八景」をかけた。滋賀県大津市出身のわん丈が“ご当地ネタ”でご機嫌を伺った形だ。2011年4月に故初代三遊亭圓丈に入門。12年4月に前座となり、16年5月に二つ目に昇進。21年11月に師匠圓丈が76歳で亡くなると、兄弟子の三遊亭天どん(54)門下に移り、24年3月、16人抜きの抜てきで、こちらは12人抜きの林家つる子(39)とともに真打に昇進した気鋭だ。
「滋賀県初の江戸落語家」をうたい、古典&自作合わせて200席以上のネタの持ち主。口跡さわやかで、しっかりとした本寸法のほれぼれする話しぶり。遊女に入れ揚げた男が易者に恋占いを頼む滑稽噺。「勢多夕照=せたのせきしょう(瀬田の唐橋)」「堅田落雁=かたたのらくがん(浮御堂)」など8つの名所が出てくるが、「近江八景に膳所(ぜぜ)が入っていないのは膳所から見た八景なんです」の解説が伏線。占いの料金を払わずに去ろうとする男を易者がとがめると「近江八景に膳所(ゼゼ=硬貨の幼児語)は入っていない」のサゲにつなげて見事だった。
次が柳家喬太郎(62)の出番だ。3人の会は3回目。「市長が代わって初めて…」と“時事ネタ”も絡めて話し始めたが、初めて後輩の桃花にトリを譲っての中入り前の登場だ。
東京生まれの横浜育ち。中学時代の友達から“観に行くよ”とメールが来たことを明かしたが「お目当ては桃花さん」と書いてあったと…。ちょっぴりふて腐れてみせ、「きょうはそのつもりで演(や)ります」と話してドッと沸かせた。
横浜にはタヌキが出るとマクラで振り、つい先日はハクビシンも見たと話を進めた喬太郎は、そのまま「王子の狐」に入っていった。人を化かすと言われるキツネが逆に人にだまされるというおなじみの噺。最後の最後まで人間の悪知恵に疑心暗鬼になるキツネをおもしろおかしく描き、貫録を見せつけた。
休憩を挟んで、鏡味仙志郎、仙成が太神楽曲芸でヒザ代わりを務めた後、登場したのが蝶花楼桃花。トリを任せてくれた喬太郎に感謝しつつ、「古典も新作も演る喬太郎師匠、わん丈さんがきょうは古典を演ったので、新作を演っていいでしょうか?」とお客さんに問いかけ、大きな拍手を受けて披露したのが「任侠流山動物園」だった。ご存じ、三遊亭白鳥(63)作の創作落語。客の減少に悩む千葉県流山市の動物園を救うため、チャボ、牛、豚が一計を案じる荒唐無稽な噺。喬太郎も時折かける一席で、桃花も堂々と自分のモノにしていた。
朝から雨模様の1日。午後4時の終演後も降り続いていたが、このあと横浜スタジアムに足を運んだ人もいたかもしれない。初戦を落としたDeNA。昼に続いて夜も高笑いといきたかったが、そうはいかなかったハマっ子の土曜日だった。
2026年10月27日 21時07分