【過去と未来の交差点】朝ドラヒロインにCM女王などなど、テレビに映画に引っ張りだこの女優・今田美桜(29)。「大きな決断」と振り返る上京から約10年。今や国民的女優となった彼女の秘めた力を解き放ってくれたのは、背伸びしなくていいと思わせてくれる言葉の数々だった。 (山内 健司)
「上京はやっぱり変わらず大きい出来事です。勇気がいるものでしたが、していなかったら全然違う人生でした」。遠い昔を思い出すかのように、ゆっくりと言葉を紡いだ。
芸能活動は地元・福岡で高2から開始。卒業後すぐ上京したいとも思ったが、踏ん切りがつかずにいた。両親と決めた「いったん22歳まで」という期限が迫る中、19歳で現事務所の社長にスカウトされて決心がついた。
だが、念願の東京で待っていたのはオーディション落ちの日々。「“絶対に受からなきゃ”って焦りがあり過ぎて楽しめなくなっていました」。苦難が半年ほど続いた頃、事務所スタッフの言葉が風向きを変えてくれた。
「また次、もう一歩先に進めればそれでいいんだから」「やっぱ相性はあるから」
心に深く刺さり「楽しまなきゃもったいない。楽しんだ方がラッキー」という思考になった。気負いが消え、歯車がかみ合い出したのだろうか。仕事をつかみ始めた。
いざ現場に入ると、立ち居振る舞いに戸惑いがあった。そんな頃、フジテレビ制作ドラマ「記憶」(2018年)で共演した中井貴一(65)からも金言をもらった。
「おまえは30点で良い」――。一般的には赤点だ。だが、これを「背伸びしなくていいんだ」と受け取り、さらに肩の力が抜けたようだ。以降「花のち晴れ」(TBS、18年)、「3年A組」(日本テレビ、19年)などで注目を浴びながら成長を重ねていく。昨年はNHK連続テレビ小説「あんぱん」でヒロイン、紅白歌合戦で司会を務め、国民的女優に駆け上がった一年だった。
常に“金言”を胸にキャリアを着実に歩み、お茶の間を魅了してきた。そこに苦しんだ時期はあったのか。「苦しいではなく、どの役も“もっとできた”という悔しさはあります」。特に悔しかった経験を聞くと「うーん、嫌なこと忘れちゃうタイプなんです。結果的に“やって良かった”ってなるので、思い出せないのかも…すみません」とちゃめっ気たっぷりに笑った。楽しみ、一歩先を目指す姿勢を積み重ね、今の彼女があるのだろう。
上京から駆け抜けた20代を「がむしゃらでした」と振り返るが、来年3月に迎える30歳の節目を前に「もっと大人のはずだった…」と苦笑い。思い描いてきた30代を「バリ!バリ!」と独特の力強い言葉で表したが「だからといって今の自分が嫌いではなく、本当に好きで楽しい」。理想の姿を今の自分に押しつけず、ありのままを受け入れる。
放送中の日テレ「メリーベリーラブ」では、海外のスタッフ、キャストと本格的に初タッグを結成。これも転機になりそうな作品だが「見ていただいて、反響があって初めて周囲からそう見えるのかなと思います」と冷静だ。30代の目標も「自分の“好き”を見つめて、自分と向き合う時間をつくれたら」と掲げるなど、天真らんまんさの中にも地に足の着いた“大人らしさ”をしっかり持ち合わせている。
ここまでのキャリアの自己採点を聞くと「気持ちは30点」と答えた後、一瞬の間を置き「それがいいのか分からない」と笑いつつ「100点ではいたくない」と強調。「着飾らずにのびのびやれたら」と柔和な表情を浮かべた。自然体で楽しむ今田の“30点”は、これからも100点以上のものを見せてくれるのだろう。
《日テレ「メリーベリーラブ」初の王道ラブコメに挑戦「小さな勇気つながれば」》「メリーベリーラブ」(水曜後10・00)では、日本の島でイチゴ栽培に励む農家の女性役。ダブル主演の韓国人俳優のチ・チャンウク(39)扮する、島に来た韓国人空間プランナーと恋に落ちる。意外にも「王道のラブコメディーは初挑戦」。可愛らしいルックスと明るい性格がハマる展開に期待が膨らむ。翻訳アプリで会話する描写もあり「(外国人と)その恋の進め方の経験者も多いんじゃないかな」と“リアル感”を伝えつつ「誰かと出会うことで外の世界に飛び出せる。その小さな勇気が皆さんにもつながれば」と呼びかけた。
◇今田 美桜(いまだ・みお)1997年(平9)3月5日生まれ、福岡県出身の29歳。13年にモデル、15年に女優としてデビュー。21年の映画「東京リベンジャーズ」で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。26年上半期のCM露出タレントランキング(関東地区)で22万6875秒を記録しトップ(ニホンモニター調べ)。1メートル57。血液型A。
2026年10月18日 07時48分