悲壮な決別の言葉から8758日目だった。「何を言っても“裏切り者”と思われるかもしれません…」。「巨人・松井秀喜」がFAでの大リーグ挑戦会見を行ったのが02年11月1日。松井秀喜氏が23年と357日の時を経て、監督として再び巨人のユニホームを着て戦うことが決まった。
都内のホテルはメディアでごった返していた。02年11月1日、巨人・松井のFA権行使による大リーグ移籍表明会見。前日10月31日夜にはドラフト会議で自身を引き当てた恩師で、当時の終身名誉監督である長嶋茂雄さんと面談した。球団側を代表して慰留した恩師に、ひるむことなく気持ちを伝え、最後には了承を得た。決意を固めて「自分なりに(気持ちを)変えられない状況に追い込ませ」て挑んだと明かした。
「何を言っても裏切り者と思われるかもしれません」
笑顔なき会見で、ファンに対しての言葉を求められるとそう言った。10年間、尽くした巨人を去ることの意味が詰まった言葉だった。
当時の渡辺恒雄オーナーはその夜、東京・銀座の料亭で財界関係者との会食後、皮肉たっぷりにコメントした。「大変結構なこと。松井君の巨人に対するこれまでの貢献に報いるためにも、彼の希望に応えてやるのは当たり前」と第一声。だが、続けて将来的な巨人復帰については「また日本でやりたけりゃやればいい。ただそのときに“空き席”があるかどうかだ。2、3年後のことまで保証はできん」と突き放していた。
それでも大リーグ挑戦表明会見で松井氏は巨人への変わらぬ愛を口にしていた。「ジャイアンツ愛に変わりはないか?もちろんありません。正直言って自分の希望としては(復帰への思いは)持っています。ただ、それが許されるかどうか分からないし“戻ってきてもいい”という中途半端な気持ちは持っていません」。愛する巨人との別れ。「命を懸けて頑張りたい」。悲壮な覚悟で旅立った場所へ帰還する覚悟は、別れの時以上の強さであることは間違いない。
2026年10月23日 15時08分