【WS舞台裏④】今回のワールドシリーズ(WS)には残念ながら日本選手が出場していないが、レイズには日本語を愛する25歳の内野手がいる。ベン・ウィリアムソンだ。左腕に刻まれたタトゥーには、こう記されていた。
「お前の道だ。一人で歩いてみろ。」
誇らしげに見せてくれた本人は「僕が見たアニメ『東京喰種トーキョーグール』に出てくる言葉なんだ。日本語は話せないけれど、どういう意味なのかは分かっているよ」と目を輝かせた。
タトゥーを入れたのは、ウィリアム&メアリー大4年生の時だった。ハーバード大に次いで全米2番目に長い歴史を誇る名門大学で学業にも励んだ秀才。当時は卒業後の進路について考える時期でもあり、アニメの中で出合った言葉が胸に響いたという。
「当時の自分にとって、これからの人生でどういう道を歩んでいきたいかという思いを表す言葉だった。誰かが決めた道ではなく、自分自身の道を選んで進んでいきたい、ということだったんだと思う」
23年ドラフト2巡目でマリナーズから指名され、今季2月にレイズへ移籍。堅実な守備と巧みなバットコントロールを武器に出場機会をつかみ、WSでも第3戦まで全試合に出場している。大学時代に思い描いた自分自身の道を、メジャーの大舞台で歩んでいる。
もっとも、日本のアニメの話になると、野球以上に饒舌(じょうぜつ)になるのかもしれない。高校時代から夢中になったという大のアニメ好き。お気に入りの作品を尋ねると、次々と名前が飛び出した。
「一番好きなのは『NARUTO―ナルト―』だね。『呪術廻戦』も今、3回目の見直しをしているところなんだ。『俺だけレベルアップな件』もすごく気に入っている。『DEATH NOTE』も大好きだよ」
さらに「『鬼滅の刃』も好きだし、最近は『ONE PIECE』もたくさん見ているよ」と止まらない。漫画やアニメにそれほど詳しくない記者は、作品名を追いかけるのに精いっぱいだった。
名門大学で学び、メジャーリーガーとなり、日本のアニメにも熱中する。多彩な顔を持つウィリアムソンだが、左腕の言葉に込めた思いは一貫している。誰かに決められた道ではなく、自分で選んだ道を進む。日本のアニメから得た人生訓を胸に、25歳は世界最高峰の舞台に立っている。(セントピーターズバーグ・杉浦大介通信員)
2026年10月27日 14時00分