陸上男子800メートル前日本記録保持者の川元奨(33=スズキ)が、24日に行われた日体大選手権で現役最終レースに臨んだ。元日本記録保持者の横田真人氏、日本選手権3位の源裕貴(NTN)ら豪華なメンバーが集う中、1分50秒33の組2着で駆け抜けた。「ラストのレースも垂れて終わるんだなと。でも楽しく終われたレースでした」。走り終えると家族や仲間、大勢の陸上関係者に囲まれ、胴上げされた。「やっと陸上が終わったなという気持ちが一番強い」。涙はなく、すっきりとした表情でトラックに別れを告げた。
16年リオデジャネイロ五輪に出場し、日本選手権は13~18年に6連覇。ケガを乗り越え、23年に7度目の優勝を果たした。日本中距離の第一線で走り続けてきたが、昨年の日本選手権は予選敗退。「日本選手権で入賞できないといけないと、常々思っていた。ここ最近、入賞が難しかったので引退してもいいかなという気持ちになった」。今年6月の日本選手権も予選組3着で決勝進出を逃した。「自分の中でしっかりと走り切れた」。中学1年から始まった20年間の競技人生にピリオドを打つ決断を下した。
「高校記録と日本記録を出したレースが一番印象に残っている」と言う。長野・北佐久農高3年時。1分48秒46の日本高校記録を叩き出し、同郷の佐藤清治が持っていた記録を11年ぶりに塗り替えた。日大4年時の14年には、日本人で初めて1分45秒台に突入。1分45秒75の日本記録を樹立した。「両方とも目指していた記録だった。佐藤清治さんの記録を抜いて、日本記録で横田真人さんを抜いて、というのが一番うれしかった」。先輩からつないだバトンは次の世代に受け継がれ、24年に落合晃が川元が持っていた日本記録を10年ぶりに更新。近年は1分44、45秒台をマークする選手が続出する活況に「誰かがタイムを出せば上がっていくんだなと。みんな乗っかってほしい」と目を細めた。
今後はスズキでコーチに転身する。「最後まで諦めずに走ってきた」。その誇りを胸に、第二の陸上人生を歩み出す。
2026年10月26日 11時40分