レイズの本拠地トロピカーナ・フィールドの名物といえば、外野席の右中間付近にある巨大水槽だ。チーム名の由来となったエイが泳ぎ、ファンは無料で触れることもできる。ワールドシリーズ(WS)の舞台がタンパに移った第3戦前には、ブルワーズの選手たちの間でも話題になった。
アーロン・アシュビー投手は「外野にエイがいるのか?」と驚きの表情。ブライス・テュラング内野手も「クールだね。触れるのかな?」と興味津々だった。
実は、この水槽には忘れてはならない歴史がある。24年10月、フロリダ州を襲ったハリケーン「ミルトン」によって、トロピカーナ・フィールドの屋根が崩壊。水槽にいた10匹のエイのうち、生き残ったのは7匹だった。
7匹は一時、フロリダ水族館などに移されたが、今春、修復を終えて再開場した球場に戻ってきた。文字通り、嵐を乗り越えて帰ってきた人気者たちだ。
「エイたちは復旧後も大人気です。WS第4戦では約3700人が遊びに来ました。1、2回はみんな試合を見に席へ戻るので、ゆっくりエイと遊びたいなら試合開始直後がおすすめですね」
施設の管理スタッフはうれしそうに教えてくれた。実際、ポストシーズンの熱戦中でも、中盤のイニングには多くのファンが水槽を囲み、エイとの触れ合いを楽しんでいた。
ところで、実際に触るとどんな感触なのだろうか。
「触れるのかな?」と話していたチュラングに、その後の感想を聞いてみたが、「いや、まだ試していないんだ。いずれ行きたいけれど」との返事。それならば、と記者が第5戦前に足を運んでみた。
水中に手を伸ばすと、エイたちがふわりと近づいてきた。意外に人懐っこいのかと思いきや、スタッフによると「人の指を食べ物と勘違いする」のだとか。
説明に従い、人差し指と中指の2本でそっと背中に触れてみる。ぬるりとした独特の感触。目の前を泳ぐ姿を眺めるのとは違い、生き物の温かみならぬ、確かな生命力が伝わってくるようだった。
わずか2年前、巨大ハリケーンに襲われた球場。屋根が崩れ落ちるほどの被害を受けながら、7匹は生き延び、再びファンの前に戻ってきた。歓声が響くグラウンドのすぐそばで、今日も変わらず泳いでいる。
その姿に、球場が日常を取り戻したことを感じた。(セントピーターズバーグ・杉浦大介通信員)
2026年10月29日 14時05分