ブルワーズは28日(日本時間29日)、敵地でのレイズとのワールドシリーズ第5戦に勝利。対戦成績を4勝1敗とし、球団創設57年目で悲願となる初の世界一に輝いた。
ブルワーズの今季年俸総額は30球団中19位の1億4350万ドル(約227億円)。2位ドジャースの3億3800万ドル(約534億円)の半分にも満たない。それでもメジャー最多の103勝を挙げ、そして、ワールドシリーズも制した。同球団で国際スカウトを担当する色川冬馬氏に快進撃の秘密を聞いた。(後編 聞き手 アマチュア野球担当キャップ・柳内 遼平)
――ここからは色川スカウトご自身の役割について。そもそもブルワーズという球団と縁ができたきっかけは。
「ブルワーズは(色川氏が代表を務める)アジアン・ブリーズで試合をさせていただいていた球団の1つだったんです。それで国際部長、今の僕の上司にあたる方とお会いしました。僕が茨城を辞任するタイミングで“将来、日本のプロ野球のGMを目指しているんだけれども、やはり僕にはまだまだ大きな世界での経験と実績が足りない。だからメジャーリーグの球団で勉強させてもらいたいんだ”という相談をしたのがスタートでした」
――そこから駐日スカウトに就任した。
「ブルワーズが、これまで何もやってこなかった日本のマーケットに対してゼロから1をつくっていきたいというタイミングでした。球団でプレーしたことのある日本人選手はいましたけど、日本駐在のスカウトというのはいなかったので僕が最初。今シーズンで2年目になりますね」
――球団からはどのようなミッションを与えられている。
「僕の仕事はいわゆるブルワーズという球団組織、その文化を世界に広げていくことです。球団の中で学ばせてもらっていることの中に面白い考え方があります。ウチの球団ではミーティングの1番最初に“Find our 1%(1%を見つけよう)”という話をされるんです。言うならばどんな可能性も閉ざさないということです。1%の長所、1%の武器や魅力があればそれで十分だというのがブルワーズの基本的な考え方なんです。だからスカウトには“その1%の可能性を掴み、発掘してきなさい”と。そして現場、マイナーリーグの現場では1%の能力を持った選手を上に導き、その1%の能力を徹底的に磨きなさいと。そしてメジャーまで行くと。1%の能力の集合体の姿こそがブルワーズの姿。コントロールできること、可能性のあるところは1%も逃さずに取っていくという野球をしています」
――これまでの2年間で実際に球団に獲得を推薦できるレベルに達した日本人のアマチュア選手は何人いた。
「5人です。野手3、投手2ですね。日本のドラフト戦線における目玉選手ではないです。当然、優秀な選手たちが欲しいというのはありますけれどもマネーゲームになった時に資金の競争にはなかなか勝てないという現実があります。ただウチの球団は育成に自信がある球団。例えば、大活躍しているミジオロウスキーもどこの大学よりも彼を高く評価したのはウチの球団です。実際、球は速いけれど(制球力の問題で)芽が開かないよねと言われていた子を我慢して育て上げました」
――推薦した5人の中には日本でそこまで注目されていなかった選手に対してNPBよりも良い条件を提示したケースもある。日本プロ野球とは異なる評価基準があるのか。
「獲得には至りませんでしたが、あまり注目を集めていない(プロ入りしなかった)選手に日本のドラフト上位指名級のオファーをしたこともあります。評価基準の差については僕が欲しいという主観ではなく、メジャーリーグの育成の仕組みに合わせた選手獲得を目指しています。“ブルワーズの育成システムならばこの選手をこう育てて、こう開花させられる”という具体的なイメージが明確に描けるかどうかが、勝負ですね」
――育成環境の仕組み自体に日米で大きな差がある。
「例えば高卒野手がNPBの2軍に入ってもピッチングレベルが高すぎる、あるいは監督が勝利を求める、そして多くの球団では育成機関を2軍までしか持っていないという状況があり、少ない打席か、良くても100打席前後しか立てないというケースがあります。しかしメジャーリーグであれば裾野が広くできていて、各球団が傘下に7、8軍クラスまで持っている。その選手の年齢や能力に合わせた場所に派遣することができ、その中で年間300打席は保証できる。我々には彼らを育成する仕組み、自信、そして最新の機器や機材があります。必要な試合数や打席数といった選手育成のための機会を最適に提供できる仕組み自体がメジャーリーグの強みであり価値だと思います」
――日本の高校、大学、社会人、独立リーグなどのチームに足を運んだ際、現地でのリアクションや温度感は。
「メジャーリーグの球団ね、くらいの感じですよ(笑い)。当然、ドジャースやヤンキースのような反応はありません。日本国内におけるブルワーズの認知度はまだまだ低いです。東京の街中を歩いていてもドジャースやヤンキースの帽子をかぶっている人はたくさんいますが、ブルワーズの帽子をかぶっている人を見つけると、逆にこっちのテンションが上がります。車を走らせている時に見かけたことはありますが、そのくらい珍しいですね」
――今後の展望は。
「ブルワーズという組織にとって、日本というマーケットが“オン”することによって、もっと多様性のある、大きくて強い球団組織がつくれるんじゃないかと思っています。そのためにも日本のNPBの選手がブルワーズで活躍することはもちろん、高校生をはじめとした若い子たちがブルワーズの組織の中で成長していくルートをつくっていきたい。あらゆる可能性、選択肢を追求していくのが、僕の仕事です」
2026年10月29日 15時30分