【全国高等学校体育連盟の奈良隆専務理事に高校野球以外の部活動の実情を聞く】
シリーズ「7回制を考える」の第4回は「高校野球以外の部活動から実情を学ぶ」をテーマとし、全国高等学校体育連盟の奈良隆専務理事(70)にインタビューを行った。同連盟は、どのような暑さ対策を講じて全国高校総合体育大会(インターハイ)を開催しているのか。「夜間開催」「試合時間の短縮」「開催地の変更」など新たに導入した改革を通して、高校生の部活動が、どう変わっていくべきかを考える。 (聞き手=河合 洋介)
――高校野球では暑さ対策が喫緊の課題となっている。7、8月に開催されるインターハイの現状とは。
「夏のインターハイも暑さ対策は大きな課題です。ただ、一大会の熱中症疑いによる救急搬送件数は10~20件で推移し、極端な増加傾向にはありません」
――どのような暑さ対策を実施しているのか。
「屋外競技ではアイスバス(水風呂)の設置などを実施してきましたが、今年はさらに大きな取り組みとして、陸上競技の夜間開催を導入しました」
――夜間開催は甲子園大会の2部制(※1)をさらに前進した形と言える。
「去年は午前と夕方に分ける2部制で実施していました。日本陸連は暑さ指数(※2)31度以上での屋外運動を原則中止と定めており、今年からは午前も取りやめて午後5時から試合を開始する夜間開催に変更しました」
――暑さ指数を試合実施の判断材料にしている。
「JSPO(公益財団法人日本スポーツ協会)が暑さ指数31度以上の場合、スポーツ活動を原則中止とする指針を出しています。その例にならい、全国高体連も今年、インターハイ向けの指針に“31度以上の場合は原則中止とする”と加筆しました」
――高校野球では甲子園球場を使用できる期間が限られている。夏のインターハイも、暑さが試合実施に影響すれば、大会期間内に全日程を終了できないのではないか。
「大会規則で定めた開催期間に試合を実施することが前提のため、全試合を消化できなくても大会期間を延長することはありません。たとえば暑さ指数の影響で試合を消化できずに準決勝時点で最終日を過ぎた場合、そこで競技が打ち切られて4校優勝となります」
――高校野球では暑さ対策の一環としてイニング数の削減を検討しているが、サッカーでは夏限定で試合時間を短縮している。
「高校サッカーは基本的に40分ハーフですが、夏は試合時間が35分ハーフに変わります。さらに、インターハイは毎年開催地が変わるのですが、サッカーに関しては男子を24年から福島県のJヴィレッジで固定し、女子も今年まで北海道で開催していました。サッカーは冷涼地で実施すべきとの意見から開催地を固定化しています」
――7回制の議論は現場から反対意見が絶えない。サッカーの試合時間短縮にも反対意見はあったのか。
「競技時間の短縮について強烈な反対があったとは聞いていません。冬と比べると夏の過酷さが明白と言えるため、不満は大きくなかったと思います」
――甲子園大会は8月開催を前提に日程が組まれている(※3)が、インターハイで暑さ対策の一環として夏開催を変更すべきとの意見はあるのか。
「確かに開催時期は課題の一つです。たとえば9月のシルバーウイークに大会を開催すれば、暑さ対策は解決するかもしれないが、開催時期が高校生の進路に影響する。それなら夏前の平日に開催しようとしても、教員には授業がある。開催時期の変更は全国高体連で進められる話ではなく、教育委員会など国全体として議論するような話だと思います」
――7回制導入の議論では教員の働き方改革も理由の一つに挙がっているが、同じ課題を抱えているのか。
「インターハイの課題を議論するプロジェクトチームがあり、そこで掲げている課題の中には暑熱対策や開催経費に加え、働き方改革が入っています。競技特性上、夜遅くまで開催することがある。そうすると大会を支える補助生徒の帰宅時間や教員、大会役員の拘束時間が問題になる。各競技の専門部に一日の試合時間や開催日数の短縮を検討できないかお願いしています」
――暑さ対策の今後の課題は。
「開催経費を適正にし、安定させていきたい。暑さ対策を万全に実施するなら経費がかさんでしまう。ただ、お金をかけないことには何もできない。費用の問題は常につきまとう課題だと思います」
※1 酷暑帯の負担を軽減するため試合開始時間を午前と午後に分けて実施する制度のこと。今夏甲子園大会では午前8時から1試合を行ったあとに一時中断し、午後1時30分から3試合行った。
※2 熱中症予防を目的に、人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標。(1)湿度、(2)日射、輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、(3)気温の3つから計算される。
※3 部活動の一環である高校野球は学業の妨げにならないよう、全国大会は長期休業中に行うべきであるとの考えのもとで大会期間が設定されている。
2026年11月04日 05時30分