◇第51回社会人野球日本選手権大会 準々決勝 東芝3―2Honda(2026年11月8日 京セラD)
最後まで攻めの気持ちを失わなかった。3―2の延長10回1死一、三塁。一打同点の局面になっても、東芝・松山は自らに言い聞かせた。「低め、低めに集めよう」。2ストライクからの4球目。内角スライダーでHonda・井上彰吾を二ゴロ併殺に打ち取ると、一塁ベンチから飛び出してきた仲間と雄叫びを上げながら抱き合った。
「(タイブレークの延長10回に)失点はしましたが、自分のバッターを打ち取るというスタイルは変えずに、ストライク先行で勝負できたのが良かった。同点まではOKだと思っていたので、長打さえなければ、と」
今季のJABA3大会を制したHondaの強力打線に真っ向から挑んだ。初回に先制こそ許したが、3回以降は5イニング連続で3者凡退。左サイドから切れの良い直球と、チェンジアップ、ツーシーム、スライダーを低めに集め、8回までを3安打1失点に封じた。1―1の9回は1死一、二塁とされたが、後続をいずれも凡飛。124球を投げ、10回を5安打2失点(自責点1)で完投してみせた。
「今年、一番強いチームと言われている中で、自分のボールがどれだけ通用するのかと。チャンレジ精神という気持ちで戦いましたし、バッターに対して勝負できた。勝てたということは自分の中でプラスになります」
強豪同士の見応えある総力戦だった。1点を追う8回1死では捕手・萩原義輝に代打・光本将吾を起用。同点に追いつくと、8、9回の2イニングは新人の田辺広大がマスクを被った。延長10回にはその田辺に代打・諸橋駿を起用。その裏からは「7番・DH」でスタメン出場していた中村浩人のDHを解除して捕手として送り出し、投手の松山を8番に入れる執念采配だった。「松山を代えるわけにはいかない。彼を軸にしてこの大会を回そうと思っているので、最後までいこうと。こちらの期待に応えてくれたと思います」。勝負手がことごとくはまった大河原正人監督も、エース左腕の快投を称えた。
24年の日本選手権準々決勝で敗れたHondaへのリベンジに成功。松山は「同じ準々決勝で負けていたので、自分の中では勝ちたい思いが強かった」とうなずいた。チームとしては7大会ぶりの4強進出。ただし、こう付け加えることも忘れなかった。「勝ててホッとしましたが、準決勝、決勝で負ければ意味がない。一戦必勝の気持ちを忘れず、また明日(9日)準備したい」。試合終了は午後11時36分。程なくして訪れる9日の準決勝・日本通運戦に向けて、勝利の立役者は早くも気持ちを切り替えた。
▼大河原正人監督 何とか粘って終盤勝負にしようという中で、本当にワンチャンスで追いついてくれましたし、選手の成長を感じました。頼もしかったです。(0―1の8回1死走者なしで代打・光本を起用し、四球で出塁)光本には“終盤に行くからバットを振っておけよ”と伝えていました。一振りにかける思いで、フォアボールを取ってくれて、最高の仕事をしてくれました。(午後8時48分に試合開始し、同11時36分に終了)組み合わせが決まった時から、こういう時間になることは想定していました。難しかったとは思いますが、相手も同じ条件なので。(決勝打の諸橋は)予選にしても、大体良いところで打ってくれる。あの場面、初球から打つのは難しいが、素晴らしかった。中村のDH解除は向こう(神奈川)にいるときから準備していましたし、田辺には終盤の出番があることを伝えていた。しんどいところを、よく守ってくれました。
2026年11月09日 01時58分