「ミスターラグビー」として日本ラグビー界に不滅の足跡を残した平尾誠二さん(享年53)が、16年10月20日に胆管細胞がんでこの世を去ってから10年。節目の年に、ファン待望の一冊が出版された。ラグビージャーナリスト・村上晃一氏による『評伝 平尾誠二』(講談社、2100円+税)だ。
平尾さんの歩みは、日本ラグビーの黄金時代そのものだった。伏見工業高(現・京都工学院)で初の全国制覇。同志社大では史上初の大学選手権3連覇。神戸製鋼では主将として日本選手権7連覇へ導くなど、その背中には常に「勝利」の二文字があった。19歳4か月での日本代表選出、そして34歳での史上最年少日本代表監督就任。常に時代の先頭を走り続けてきた。
これまで多くの関連本が出版されてきたが、意外にも「評伝」と銘打たれたものはなかった。著者の村上氏は、平尾さんと同じ京都市出身の2学年下。現役時代は大阪体育大のFBとして、当時大学選手権3連覇中だった同志社大の関西大学リーグ連勝を「71」で止めた経験を持つ。ベースボール・マガジン社を経て「ラグビーマガジン」編集長を歴任した村上氏は、平尾さんが最も信頼を置いたライターの一人だった。
本書の最大の見どころは、家族や関係者ら41人への徹底取材で浮き彫りになった「知られざる真実」だ。かつて日本代表から外された背景にある「アマチュア規定違反」の真相や、人生に多大な影響を与えたDCブランド「BA-TSU」の創業者・松本瑠樹氏との深い絆など、これまでベールに包まれていたエピソードが克明に綴られている。
「最後は根性や」
「俺はリーダーじゃない。リーダーの夢をかなえる参謀なんや」
「実際の試合の前に、試合は終わっている」
最後まで“平尾誠二”という美学を演じきって旅立った男。グラウンドで見せた凄みだけでなく、一人の人間としてどう生きたのか。ラグビーファンならずとも、その生き様は読む者の心を激しく揺さぶるはずだ。
2026年10月20日 11時23分